●フォイル軸受とは
フォイル軸受とは、波型のバンプフォイル(支持構造)とトップフォイルで構成される空気軸受です。負荷荷重をバンプフォイルによって弾性的に支持し、傾斜の付いたトップフォイルと回転軸との間に気体膜を形成することで回転軸を浮上させています。そのため、非常に低摩擦での運転が可能なほか、潤滑油を用いないことから付帯設備を必要としないため、小型化がしやすく、地球環境に優しい軸受となっています。フォイル軸受は、荷重が加わった際にバンプフォイルが変形することで気体膜を形成しやすく、また振動のエネルギーを減衰させることができるため振動に強く、焼き付きにくいという特徴を持っています。

●主な研究内容
フォイル班ではフォイル軸受に関する新たな提案や、実験装置の製作や改良等の活動をおこなっております。下記にこれまでの研究内容を記載しております。学生独自の斬新な発想により、世界初の試みや特許出願の事例もあります。
新規フォイル形状の開発
この研究では、振動抑制効果の向上を目的として、スラスト型バンプメッシフォイル軸受の提案を行いました(3)。メッシュフォイル軸受に波形状という要素を加え、バンプメッシュフォイル軸受を製作し、バンプフォイル軸受やメッシュフォイル軸受との性能比較を行いました。その結果、従来のフォイル軸受に比べて浮上特性や振動抑制効果が向上しました。この形状は特許を出願しました。
表面テクスチャを持つトップフォイルの開発
この研究は、低摩擦化や潤滑性能の向上を目的として、表面テクスチャを持つトップフォイルの提案を行いました(4)。バンプフォイル軸受のトップフォイルに、ディンプル、フィボナッチグルーブ(F-グルーブ)といった数µmの溝を施し、通常のバンプフォイル軸受との性能比較を行いました。
その結果、トップフォイルに表面テクスチャを施したバンプフォイル軸受は、接触時の摩擦温度上昇効果を発揮したり、摩擦係数が低減されたりなど、様々な効果を発揮できていることがわかりました。こちらの形状も特許を出願しました。


X線CTによる可視化
この研究は、フォイル軸受動作時の観察を目的として、X線CT検査装置を用いて停止時および回転時のフォイル変形の可視化を行いました(5)。今までフォイル軸受動作時の可視化は行われておらず、フォイル変形の詳細な把握ができていませんでした。そのため、X線CT検査装置を用いて停止時や回転時の観察を行った結果、フォイル変形の詳細な把握ができました。これは世界初の試みです。

●直近の研究成果
・日本機械学会関東支部関東学生会第61回卒業研究発表会 BPA受賞 (2022年) 桑田侑季
「バンプメタルメッシュを支持構造に適用したジャーナルフォイル軸受の軸受特性の評価」
・日本機械学会2022年度年次大会基礎潤滑部門卒業研究コンテスト 最優秀賞 (2022年) 桑田侑季
「バンプメッシュフォイル軸受の軸受特性の実験的評価」
・日本機械学会関東支部関東学生会第62回卒業研究発表会 BPA賞受賞 (2023年) 田中天琉
「波型ゴムフォイル軸受の製作と軸受性能の実験的評価」
参考文献
- 一般社団法人日本自動車工業会、2050年カーボンニュートラルに向けた課題と取組み,2021
- 株式会社IHI,カーボンニュートラルの実現に貢献する燃料電池向け電動ターボチャージャの開発,2021
- 松下知憲,砂見雄太,橋本巨,落合成行,”メタルメッシュを用いたスラストフォイル気体軸受の実験的検討”,関東学生会第56回学生員卒業研究発表講演会論文集,2017
- 菊池日向,落合成行,”新規表面テクスチャがガスフォイル軸受の潤滑特性に及ぼす影響”,日本機械学会2019年度年次大会,2019
- 竹内 大哉,落合 成行,畔津 昭彦,” X線CT検査装置を用いた運転時のフォイル軸受における支持構造の可視化および変形量の測定”, 日本機械学会2021年度年次大会,2021
- 桑田 侑季,落合 成行,畔津 昭彦,”バンプメタルメッシュを支持構造に適用したジャーナルフォイル軸受の軸受特性の評価”,関東学生会第61回学生員卒業研究発表講演会,2022