●メカニカルシールとは
シールとは、液体や気体が外部へ漏れるのを防ぐことや、異物の混入を防いだりする役割を持つ機械要素です。その一種に高回転軸周辺の流体の漏れを防ぐ非接触メカニカルシールがあります。非接触メカニカルシールとは、主に回転軸とともに回転する回転環、ハウジングに固定摺動され回転しない固定環、固定環を回転環に押し付けるバネによって構成されています。特徴として,バネで2つの環を押し付けることで漏れを防ぎ、回転環と回転軸が摺動しないため軸を摩耗させないこと、非接触で動作するためシール面が摩耗しない、従来よりも高速回転可能、高圧環境で使用可能、溝形状にシール性能が依存する等があげられます。現状のメカニカルシールの問題点としては、非接触であるが故に、図に示している漏れ経路からオイルなどの流体が漏れること、シールの熱膨張により、焼き付きが発生することなどが挙げられます。

研究内容
シール班では、メカニカルシールから出る漏れ、焼き付きを防止するため、様々な溝形状を考案し、性能評価やシール表面の可視化を行っています。過去の研究では、漏れ量の低減および温度分布の均一化を目的として、進化的セルオートマトン法※という最適設計手法による、メカニカルシール表面の溝を最適化を行いました。この最適化により、解析上は既存のメカニカルシールよりも漏れ量が少なく、温度分布も均一化することが出来ています。今後は、実際の使用環境における性能評価を行い、最適手法による溝の最適化の有用性を検証します。

※進化的セルオートマトン法とは?
進化的セルオートマトンとは、自然界の自己組織化をモデルとした遺伝的計算アルゴリズムであり、ミクロ領域での相互作用の原理がもとになっています。下の図のように、ある条件下であれば、次の世代の形状が定まります。シール班ではこの方法を利用し、漏れ量低減と温度分布の均一化に効果がある遺伝パターンのみを抽出しました。

関連資料
- 板谷壮敏,上村訓右,杉村丈一,“メカニカルシールにおけるキャビテーション領域の観察と圧力測定”,トライボロジスト,第66 巻第12 号(2021) 940~945
- 佐藤 勇希,落合成行,“非接触メカニカルシールにおける潤滑膜内の流れが温度分布に及ぼす影響” 東海大・工(学・院)
- 明戸洋介,落合成行,”セルオートマトンを用いた表面テクスチャリング最適化法の検討とドライガスシールへの適用”,機素潤滑設計部門講演会講演論文集 2018.18 (0), 2C1-7-, 2018
参考文献
手嶋芳博,“メカニカルシールにおけるディンプルしゅう動材のシール特性に関する研究”, 長崎大学学位論文, (2001)