●ジャーナル軸受とは

 ジャーナル軸受は、軸の回転によって潤滑油が軸受下部のくさび状のすきまに流れ込むことによって、油膜圧力が発生し、回転軸を非接触で支持することが可能な軸受です。この軸受は高負荷容量・耐衝撃性に優れているといった特長を有していることから自動車用エンジンや大型の高速回転機械などに幅広く用いられています。

●主な研究内容

 ジャーナル班の研究内容は大きく3つのテーマに分かれています。

  • ジャーナル軸受の摩擦低減を目的とした研究
  • 軸受内部の可視化を目的とした研究
  • 浮動ブッシュ軸受に関する研究

●ジャーナル軸受の摩擦低減を目的とした研究

近年の自動車におけるエネルギー損失の約20%をエンジンの摩擦損失が占めていることが報告されており、エンジンにおける環境にやさしい新たな摩擦低減手法が求められています。そこで本研究室ではマイクロバブルに着目しています。

マイクロバブルとは・・・

マイクロバブルとは、直径10~100 µm 程度の微細な気泡です。

主な特徴として消泡しにくいことや流体抵抗の低減効果を持つことなどがあげられ、船舶などの摩擦低減にも活用されています。本研究室ではこのマイクロバブルをジャーナル軸受に適用し、新たな摩擦低減手法の確立を目指しています。

●マイクロバブルを混在させた場合での摩擦低減効果

ジャーナル軸受実験装置にマイクロバブルを混入させた場合の摩擦低減効果に関して、本研究班では様々な取り組みが行われています。過去の研究結果では、軸受の偏心状態において、軸受内にマイクロバブルを混入させると摩擦トルクが低減するという結果を得ており、実用化に向け、最適な運転環境や条件を確立すべく、日々研究しています。

軸受内部の可視化を目的とした研究

マイクロバブルの摩擦低減メカニズム解明のアプローチ方法の1つとして、本研究班では「可視化」に着目しています。世の中には数多くの可視化手法が存在しますが、本研究班では、本研究室独自の可視化手法であるフォトクロミズムを用いた可視化実験を行っており、新しい視点からマイクロバブルの摩擦低減メカニズムの解明を目指しています。

フォトクロミズムとは・・・

 フォトクロミズムとは、フォトクロミック色素とよばれる色素を溶かした溶液に外部から紫外光を照射することで可逆的に溶液の色が変化する現象です。フォトクロに関する詳細な説明に関してはフォトクロ班を参照してください。

                フォトクロミズムの反応例

●フォトクロミズムを用いた可視化実験

 ジャーナル軸受の潤滑油内にフォトクロミック色素を混入させることで、回転中の軸受内油膜に着色を行います。着色部を撮影した生画像を画像処理し、吸光度画像を取得します。油膜への着色部は軸の回転方向に合わせて引き延ばされていく挙動が確認できることから流れの可視化を行うことができます。また、着色部の色の濃さを示す吸光度から、油膜厚さを算出できるため、ジャーナル軸受内の油膜流れと膜厚さの測定を同時に行えます。この可視化手法は落合研究室独自で開発されました。

マイクロバブルの可視化

 上記の可視化手法を用いて、本研究グループでは、軸受内を移動するマイクロバブルの可視化に成功しました。本手法を用いることによって、従来の可視化手法では得られなかった画像を取得でき、マイクロバブルの摩擦低減メカニズム解明向けて日々研究を進めています。

浮動ブッシュ軸受に関する研究

浮動ブッシュ軸受とは・・・

 浮動ブッシュ軸受とは、ジャーナル軸受の1種であり、軸と軸受の間に円筒状のブッシュと呼ばれる部品を挿入したものであり,潤滑油によってブッシュの軸側と軸受側の両方に油膜が形成されます。ブッシュが回転することによって、軸とブッシュ間のせん断流れによる速度勾配を緩和し,摩擦損失を低減させます。主な使用例として、自動車用のターボチャージャや船舶用の過給機などがあります。本研究班では、浮動ブッシュ軸受の性能評価に関する研究も行っています。

浮動ブッシュ軸受の概略図

●研究内容

浮動ブッシュ軸受の模擬装置を作製し、可視化実験や回転数測定実験などを行っています。また、本大学に設置されている「東海大学イメージング研究センター」内でのX線CT検査装置を用いて、軸受内の油膜挙動の可視化も行っています。

 

●直近での研究実績

・第21回機素潤滑設計部門講演会 奨励賞受賞 (2022年度) 梶木碩介

「ジャーナル軸受におけるフォトクロミズム可視化手法を用いたマイクロバブル周りの油膜挙動観察」

・AICE Award 受賞 (2022年度) 梶木碩介

「ジャーナル軸受におけるフォトクロミズム可視化手法を用いたマイクロバブル周りの油膜挙動観察」

日本マリンエンジニアリング学会 山下勇賞(優秀学生奨励賞)受賞 (2024年度) 野坂 尚弘