スピンドル班は主にHDDの回転部に用いられている小型スピンドルモータ(エアスピンドルモータ)に関する研究を行っています。
●スピンドルモータとは・・・
スピンドルモータとはモータと回転部が一体化した装置のことを指します.わかりやすく言い換えるならば,モータで軸を回転させ歯車で回転を伝達しタイヤを動かすのではなく,コイルの周りにタイヤがついており,電気を通すと回転するといったイメージです. 本研究室では,HDDやLiDARに使用されている小型化されたスピンドルモータについて研究しています.HDDは個人の利用が減少傾向にあるものの,クラウドやIot化などが発展しておりデータ量の増加から,データセンタにおけるHDDの需要が高まっています。
HDDは磁気ディスクを回転させることで情報の読み書きをします。ディスクを高回転させることで高速なデータの読み書きが可能ですが,空気の流れによる風損や機械的な故障を避けるために、一般的な製品では5,400rpmと7,200rpmの回転数に制限されています。それらの回転運動を担っているのが,小型のスピンドルモータです. 従来のHDDには,油を使用している「オイルスピンドルモータ」が採用されています.実際に起動させるとコイルに電気が流れ磁力が発生し,磁石との反発によりハブとハブについたシャフトが回転します.回転するとシャフトに掘られた溝でくさび効果が働き,正圧が発生しその圧力によりハブを支えます.しかし,近年の環境問題の悪化や,粘度が外部温度に左右され消費電力が安定しないことなどの問題がありました. そこで本研究室では,空気に注目し,油を空気に換えた「エアスピンドルモータ」を開発しました.現在は主に,このエアスピンドルモータについての研究を行っております.


・研究内容
スピンドルモータの製作
本研究室ではスピンドルモータの一部を自作しています.自作しているものは「コイル」「軸受」です. コイルについて紹介します.コイルはモータに欠かせない部品になります.コイルに電流を流すことで発生する磁力と,シャフトに取り付けてある永久磁石との反発力で回転を生み出します.このコイルを本研究室では手で巻いています.1つのスロットに0.16mmのエナメル線を30回~40回巻いています.コイルの大きさや巻き回数などの条件を揃えることで,よりスムーズな回転を実現しています. 次は軸受です.スピンドルモータの軸受は,数µmの溝が彫られており,その溝を流れる流体によりくさび効果を発生させます.この溝はエッチング加工で作られるものや,機械加工で作られるものがあります.本研究室では,レーザ加工機を用いて溝の加工を施しています.レーザを使うことで,自由度の高い溝加工が行えます.

実験内容
1:回転実験 2:振動実験
1:回転実験
回転実験では消費電力や回転数などから軸受の性能評価を行います.
2:振動実験
エアスピンドルモータは振動に弱いことがこれまでの研究からわかっています.そこで,オイルスピンドルモータに比べてどの程度弱いのか.また,オイルスピンドルモータがどのような減衰性能を備えているのかを評価します.こちらの評価方法に関しては現在研究を進めております.
解析・最適化
本研究室では長年小型スピンドルモータに関する研究が行われており,様々な解析や最適化が行われていました.実際に現在使っている軸受の溝の形も最適化により導かれた形をもとに,加工されています.
・最終目標
スピンドル班ではエアスピンドルモータの実用化を目標に活動しております.小型のスピンドルモータですが,使用されているものすべてが「オイルスピンドルモータ」から「エアスピンドルモータ」に移行できれば技術の発展だけでなく,オイルフリーによりSDGsなどの環境課題に対して大きな貢献をすることができます.今後も世界や地球のために,さらに研究活動に励んでいきます.