トラクションドライブとは

トラクションドライブとは歯車に変わる新しい動力伝達機能のことです。
現在使用されているガソリン自動車ではエンジンの回転数が走行中は2~3,000rpmなのに対して電気自動車を普及するにあたって目標となるモータ回転数は50,000rpmと言われています(※1)
そのため、高速回転に対応している動力伝達機構が必要となってきています。
高速回転下では摩擦やスカッフィングなどの影響で歯が破損してしまうことがあります。
しかし、トラクションドライブというのは、歯車のような歯を持たずに滑らかな接触面を持つ
ローラを使って動力を伝達する方法です。

※1 TRAMI 自動車用動力伝達技術研究組合

トラクションドライブの概要

トラクションドライブは、以下の図のように構成されています。
二つの転動体間にトラクション係数と呼ばれる動力伝達力が高い油を介在させ、両端から強く押し付けることによって動力を伝達させる方法です。この油(トラクション油)は二つの転動体間に働くせん断力によって発生する熱の影響や、間に介在する油の油膜厚さで動力が低下してしまうということが知られています。

トラクションドライブの概要

研究内容

実験装置

トラクション班では高荷重高回転の運転状況の再現を行うために大型の試験装置(2)を使用しています。

トラクション実験装置

トラクション班は以下4つの研究を行っています。

  • 流れの可視化
  • 温度測定
  • 油膜厚さ測定

温度測定

 転動体を用いて動力を伝達する方法であるトラクションドライブは、接触面に油を介在させる必要があります。しかし、転動体及び油の温度が上昇してしまうと、動力伝達効率が落ちてしまうといった問題が発生してしまいます。この温度上昇メカニズムの解明、冷却性能向上のために温度測定を行っています。

測定方法:熱電対を用いたローラ表面温度の測定

流れの可視化

 転動体を押し当てることでその間の接触部には圧力の変化が生じ、キャビテーションといった空気膜が形成されてしまいます。この空気膜の生成から、潤滑不良による動力伝達率の低下や冷却性能の低下が見込まれてしまいます。それを解決するために、空気膜の発生原理や速度場の解析などを行っています。

油膜厚さ測定

 高周速での回転時には、接触部に介在する油の膜厚さが増加していくにつれて動力伝達能力が低下してしまうことが知られています。その問題を解決するために高周速下において油膜厚さの測定をすることが重要となります。そのために現在は、油膜測定手法(GMFT法:Global Model Fitting for thickness法)確立のため光学系の改善等を行いながら実験をしています。