●フォトクロミズム可視化手法とは
フォトクロミズムとは、特定波長の紫外光を照射することによって、色が変化する現象です。この反応は可逆的であり、白色光や熱を加えることで元の色へと退色します。この性質を持つ色素をエンジンオイルに溶かし、観察したい部分に紫外光の照射し、部分的に着色させることで油膜挙動の可視化を行えます。この手法の特長としては、紫外光の照射によって反応を起こすため、「任意の箇所で観察できる」こと、分子構造の変化であるため「流れの影響を及ぼさない」、退色反応が緩やかに進行するため、「長時間の観察が可能」であることが挙げられます。また、油膜流れだけではなく、色の濃さを示す吸光度を用いて「油膜厚さ」も同時計測することが可能です。この手法はエンジン内部の可視化に加えて、本研究室ではジャーナル軸受の可視化など、応用範囲を拡大して様々な研究に適用させています。

●主な研究内容
●エンジン実験
自動車エンジン内部の可視化を目的とした研究です。以下のような手順で実験を行っています。
・レシプロエンジンにおけるオイル消費メカニズムを可視化実験により解明する
・数値計算による計算結果の検証データを提供する
・従来手法(LIF)では実現できない情報をフォトクロミズム可視化手法により取得
・オイル挙動の把握と同時に油膜厚さ,速度等定量的なデータ取得を行う

校正実験
本手法は色の濃さを表す「吸光度」で油膜厚さを測定でき、それぞれの関係は「校正実験」で調査しています。こちらが校正実験装置の概略図となっており、金属球とガラス平板の間を溶液で満たすことで、既知の油膜厚さを作製し、着色した油膜を可視化実験と同じくハイスピードカメラと二分岐光学系を用いて撮影し、取得した画像より算出した吸光度を金属球の寸法を参考に油膜厚さに換算しています。
